あゝ思い出ごはん

アクセスカウンタ

zoom RSS 大石内蔵助の卵かけごはん

<<   作成日時 : 2007/10/27 06:41   >>

トラックバック 0 / コメント 0

画像

 最近、気になる料理は「卵かけごはん」である。料理ともつかない料理だが、本ブログの相棒で「ごはん大好きの会」代表の鈴木町子さんが先日紹介していた「大石内蔵助が討ち入り前夜に食べた」という「鴨肉入りの卵かけごはん」とは一体どんな代物なのか?あれこれ調べていたら、この「歴史的卵かけごはん」を再現し、これが大層うまかった、と言う御仁を発見した。

 この食いしん坊は、男子厨房歴20余年、人気イラストレーターの矢吹申彦(のぶひこ)さん(写真上)。映画監督の故伊丹十三さんの原稿のイラストや本の装幀を多く手がけたほか、月刊「東京人」誌の表紙絵が評判を呼んだ。『文人志願』など著書も多数あるが、03年、料理相伴人として上梓したのが『池波正太郎のそうざい料理帖』(写真下、平凡社)。
 
画像

  この本は、稀代の食通作家、池波正太郎の食日記や食エッセイから「酒家垂涎のそうざい料理」を春夏秋冬別に選んでメニュー化し、その作り方を矢吹さんがイラストで手順を再現したものである。

 品書きは例えば
【春】白魚の碗盛り、蛤の湯豆腐、鯛の塩焼き鍋、浅蜊のぶっかけ飯、蛤の深川丼
【夏】初鰹2種、焼太打ち冷やむぎ、白瓜のサンドイッチ、むかし風ライスカレー
【秋】秋鯛のレモン〆、豚肉のうどんすき、蕎麦のうす焼き、軍鶏鍋と芋酒
【冬】鮪のヅケ焼き、ソースカツ弁当、鰈の骨湯、牡蠣の昆布敷焼き、大根と豆腐の小鍋だて・・
  珍味が延々と続く。お目当ての「間鴨(あいがも)入りの生卵のぶっかけ飯」は冬の部である。

 池波さんのエッセイによると・・・・
元禄15年(西暦1702年)12月14日の吉良邸討ち入り当日。大石内蔵助・主税の父子は、住み暮らしていた日本橋・石町(こくちょう)の小さな借家を出て日本橋・矢の倉の堀部弥兵衛・安兵衛父子の家へ向かった。

 到着した内蔵助が瑠璃紺緞子(るりこんどんす)の着込みに鎖入りの股引をつけ、黒小袖に火事羽織という討ち入りの身支度にかかったとき、安兵衛の親友で、学名高い細井広沢が生卵をたくさんに入れた籠をたずさえて激励に現れた。折しも堀部父子の妻たちは台所で腹ごしらえのための飯を炊き始めていた。

 「ちょうどよい」。用意した鴨肉を焙(あぶ)って小さく切ったのへ、つけ汁をかけまわしておき、一方では大鉢へ生卵をたっぷりと割り込み、味をつけたものの中へ鴨肉ときざんだ葱を入れ、これを炊きたての飯と共に供した。
このほかにかち栗や鴨と菜の吸い物なども出したらしいが、内蔵助をはじめ一同は、何よりも鴨肉入り生卵をかけた温飯(ぬくめし)を大喜びで食べたという。
(『食卓のつぶやき』=週刊朝日1983年10月14日号〜84年7月20日号より=概略)

 料理は全部で40点ほど。矢吹さんはこれを全部、自分で作り、試食した。そしてあとがきにこう書いた。
 「読んでいるうちに、食べたくなるような文章を書いた先達は、高橋義孝、檀一雄、伊丹十三、向田邦子、そして池波正太郎先生だった。食べたくなって直ぐ作るのは私の得意とするところ。今回の中でうまかったものの一つを挙げれば“間鴨入り生卵のぶっかけ飯”だったろうか」

 旧知の矢吹さんにお目にかかるのは3年ぶり。ツタに覆われて絵同様にスタイリッシュな東京・世田谷のご自宅を訪ねた。以下、矢吹さんの楽しい食談義である。

 「卵かけごはんはそもそも美味しいが、食事としては単純で物足りないですね。しかし、内蔵助の卵かけごはんは、作る時から手間がかかって楽しめました。まず、鴨肉の薄切りロースを二つぐらいに切って醤油とみりんのつけ汁をかけ回しておく。本来はこれを炭火で焼いた方がよいのだろうが、私はフライパンで焼き、きざみネギと一緒に溶き卵に合わせて炊きたてのご飯にかけました。いや、うまかったですね。精がつく感じもあって」
画像
     (『池波正太郎のそうざい料理帖』より)

 「池波さんがこだわり、流行らせたものに江戸文学にもよく出てくる“小鍋だて”料理があります。魚介や野菜などをせいぜい2品か3品、1人か2人用の鍋焼きうどんサイズの小さな鍋で煮ながら食べるシンプルなものです。池波さんの料理ではありませんが、私が最近、凝っているのは“穴子の小鍋だて”。一口大に切った穴子を素焼きにして、豆腐と細ネギを昆布と酒たっぷりの出汁で煮るだけです。穴子は焼かないとうまくなりません。豆腐もうまいし、柚子の皮の細切りなんかがあると最高ですね」

 「ボクの父はもう30年前に亡くなりましたが、帆立貝の貝殻を“小鍋だて”にしてよく鍋料理を楽しんでいました。そのお相伴をしていた私は、ハンバーグなんかより、ナマコの酢の物や筋子などの珍味が好きな変な子供でした。でもそのお陰で・・・」

 矢吹さん!ありがとう! 
今度の休日は、二つの料理のどちらかに挑戦してみよう!
内蔵助の卵かけごはんか、それとも穴子の小鍋だてか?
思い出ごはん亭おやじは、舌なめずりしながら、思い悩むのである。

 
☆コメント歓迎します。以前の記事にもどうぞ!
☆「鈴木町子のごはん絵はがき」は一回、お休みしました。

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

大石内蔵助の卵かけごはん あゝ思い出ごはん/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる